ギリシャ哲学者ソクラテスは、古代アテネで活躍した哲学者であり、知恵と倫理の探究に貢献しました。彼の哲学的なアプローチは、自己認識と謙虚さを重視するものであり、彼が残した言葉や哲学は現代にも多大な影響を与えています。
ソクラテスといえば、「聞いたことがある」「聞いたことがあるけど何をした人なのかわからない」そのような方々にもわかりやすいようにまとめてみました。
この記事では、ソクラテスのプロフィール、ソクラテスの思想、ソクラテスの弟子、哲学的アプローチが現代社会においても重要な意義を持つ理由を考察してみました。
この記事でわかること
- ソクラテスはどんな人なのか
- ソクラテス思想をわかりやすく解説
- ソクラテス、プラトン、アリストテレスの思想を比較
- ソクラテスの名言達
- 現世にどのような影響を与えているのか
- ソクラテスの弁明について解説
ソクラテスはいつの時代に活躍した人なのか

ソクラテス思想を解説する前にソクラテスに関する基本的なプロフィールを書いてみました。
名前 | ソクラテス |
生年月日 | 紀元前470年〜紀元前399年 |
活躍した場所 | 古代ギリシャ |
父 | 彫刻家 ソプロニスコス |
母 | 助産婦 パイナレテ |
ソクラテスはプラトン、クセノフォン、アリストパネスなど多くの著名な人物と交流を持ち、彼の思想や哲学的アプローチはその後の哲学に多大な影響を与えました。倫理学、最初期の倫理学者の1人として活躍していました。自身では本を残すことをしなかったので、ソクラテスの死後に彼の弟子によってソクラテスについて資料として残されました。
ソクラテスは「神を敬わない、若者を堕落させる」という罪で裁判になり、死刑判決が出ました。死刑執行前日には収容されている牢獄を友人が訪れて逃亡するようにソクラテスを説得しようとしますが、彼は逃げずに翌日の死刑執行で毒薬を飲み、亡くなりました。

死刑の理由が現代だと考えられないものだね
ソクラテス思想とは何かをわかりやすく解説


無知の知
「無知の知」とは、ソクラテスの哲学的アイデアの一つであり、彼が「私は何も知らないと唯一確信しているのは、私が何も知らないということだけである。」という言葉で表現した考え方です。つまり、人間が真実を知ろうとする姿勢は素晴らしいことだが、自分が何も知らないことを自覚することが重要であるという意味です。この考え方は、哲学や学問を追求する上での重要な指針の一つとされています。
「知ったかぶり」ではなく本質を理解していないのに「知っていると勘違い」をしているということでもあると解釈できます。会話をしている中で、物事について多少は知っていることがあるが全てを理解していないことを指していると考えます。わからないことがあれば「わからないです」と正直に言った方が自分の為にもなり、わからないことへの恐怖をなくしてくれるような思想だと思います。
不知の自覚
自分は何も知らないということを自覚することを言います。ソクラテスは自分は何も知らないことを認識して認めてあげることで自己改善を促し、追求し、真理に近づこうとしていました。「不知の自覚」とは自己認識の一部であり、自分自身の限界を認めることができ、他人から学ぶことができるようになります。それによって、より正確な知識や情報を得ることができ、より深い理解を持つことができるようになるのです。
「無知の知」と「不知の自覚」は似て非なるものであるとされています。どちらも自己認識や自己改善に重要な概念であり、真理を探求する上で必要な要素であると言えます。しかし、異なる側面を持つ概念であるため、厳密には区別されます。
問答法
「自分は何も知らない」というスタンスから、自分自身や他人の意見を引き出すために、疑問を投げかけることが多く、それに対する回答を引き出すことで問題点を明確にし、真理に近づくことを目指しました。また、ソクラテスの問答法は、自己反省にも繋がることが多く、自己の持つ価値観や信念について、より深い理解を持つことができます。
問答法は、哲学や教育、コーチングなどで用いられる手法としても有用であり、相手の考え方や立場に寄り添いながら、深い対話を進めることができます。また、問答法は、議論や意見交換においても有効で、相手の主張をより明確にし、相手の考え方を深く理解することができます。
知識と美徳
知識とは、事実や情報を理解することであり、知的な能力を発揮することによって獲得することができます。一方、美徳とは、人間としての道徳的な価値観や品性のよさを指し、自己改善や他者に対する思いやりを持つことによって獲得することができます。知識だけでは人間としての魅力や尊敬を得ることはできません。美徳は、人間としての資質や品格を高め、他者からの信頼や尊敬を得るために必要な要素です。
知識と美徳は、お互いに相互補完的な関係にあります。知識があるからこそ、美徳を育むことができます。美徳があるからこそ、知識をより良い方向に活かすことができます。両者をバランスよく持つことが、人間としての豊かな人生を送るためには重要なのです。
ソクラテスは人間の美徳はすべてその実践と経験によっておのずと増え、強まるのであると残しています。正しい知識をつけて行動することにより、人間としての質の向上や性格が形成されていくということです。
自己認識と自己改善
ソクラテスは、自己認識を重視し、自分自身や他人が持っている考え方や信念、価値観を探究することで、真理に近づこうとしました。彼は、自分自身についても他人についても、知らないことを認め、自己認識のプロセスを通じて自分自身の限界や欠点を知り、自己改善に繋げようとしました。
ソクラテスは、自己改善についても、自己認識のプロセスが不可欠であると考えました。自分自身の限界や欠点を正しく認識し、自己改善をすることで、より良い人生を送ることができると考えたのです。ソクラテスは、自己改善を通じて、より正しい人生のあり方や生き方を発見しようとしました。
このことに関しては上記で解説した「無知の知」と「不知の自覚」につながります。無知であることを自覚、認めることで自身の考え方や信念を追求して自己改善をしようとします。現代を生きている私たちにとっても必要で大切なことですね。
謙虚さと探究心
まず、謙虚さについて言えば、ソクラテスは「自分は何も知らない」と常に口にしていました。彼は自らの無知を認め、それを克服するために自己改善を追求することで真理に近づこうとしたのです。ソクラテスは、自分自身が限界を持っていることを認めることで、他人から学ぶことができると信じていました。そのため、ソクラテスは常に謙虚な姿勢で、自分自身や他人に接していました。
そして、探究心について言えば、ソクラテスは自己認識を通じて、真理を探求しようとしました。彼は、自分自身や他人が持っている考え方や信念、価値観を探究することで、真理に近づこうとしたのです。また、ソクラテスは常に疑問を持ち、真実を追求するために自己批判的な姿勢を貫きました。彼は、真理を発見するために常に探究心を持っていました。
この世の中の物事に対して謙虚な姿勢でいると様々なことに対してわからないことが見えてくると考えます。謙虚であることによって探究心が働き、真理に近づくことは何かを学ぶときにとても活かされると思います。これも「無知の知」につながる部分であり、上記で解説したことは全て糸のように繋がっています。



無知の知から派生しているね!
ソクラテス、プラトン、アリストテレス思想の比較をしてみた


ソクラテス
ソクラテスの思想は上記で説明した通りであります。
要するに、「自分が無知であることを認めている謙虚な姿勢で探究し自己改善に努めよ」という思想です。当時の古代ギリシャは政治が成り立っていない状態であり、政治家の都合がいいことだけ話していたような実態でした。そこでソクラテスは、政治家などに討論を仕掛け、「論破王」というくらい政界の人々を論破していたようです。若者からはソクラテスは人気になりました。その若者の中にプラトンも含まれており、ソクラテスの弟子になります。
プラトン
プラトンは家がとても裕福で、優秀な人でした。ソクラテスの活躍を見て憧れを抱き、ソクラテスの弟子となりました。ソクラテスと同じ思想を持っているのかと思いますが、異なる思想を説いていました。
プラトンは、イデア論という思想があり、「この世には本当の正義、本当の善、本当の美などは存在しない、これらはこの世とは違うイデア界に存在している」と言っていました。イデアとは、物事の本質的な形態、あるいは本質を持つ存在を「イデア」として捉えるものです。
わかりやすく例えると、
「猫のイデア」という概念を考えることができます。実際に私たちが目にする猫は、それぞれ体型、毛色、性格などが異なっています。しかし、それらの猫が「猫」として共通して持つ本質的な形態、すなわち「猫のイデア」は、一つだけ存在していると考えるわけです。
イデア論では、物事の本質的な部分を抽象化することで、多様性や不確定性に対する問題に対処しようとするのです。
アリストテレス
アリストテレスはプラトンが作った学校の生徒であり、彼もとても優秀な成績であったようです。アリストテレスはプラトンの学校に在籍していたのでイデア論のように同じような思想を持っているように見えますが、逆の思想を持っていました。
アリストテレスは多岐に及ぶ活動をしていましたが、その中でも代表として二つの思想を紹介します。
- 「万物は目的を持って存在する」という目的
アリストテレスは、万物はそれぞれ目的を持って存在していると考えました。例えば、植物は成長し繁殖することが目的であり、動物は自らを維持することが目的であるとされます。そして人間においては、知恵や道徳を追求することが最高の目的であるとしました。
- 「黄金の中庸」という倫理学
アリストテレスは、「中庸」という考え方を提唱しました。これは、あらゆる徳(美徳)が過剰または不足した状態をもたらすとし、それを避けるためには、それらの徳の中間の状態を保つことが大切であるという考え方です。例えば、勇気と臆病の間にあるのが勇敢であり、怒りっぽさと感情の抑制の間にあるのが大志とされます。
プラトンは不確定なものに対して問題を対処しようとしていましたが、アリストテレスは現実で起きていることに対して客観的に物事を捉えて対処しようとしているのです。



ソクラテスの弟子なのにみんな違う思想を持っているんだね!
ソクラテスの名言はたくさんある


ソクラテスには数多くの有名な言葉がありますが、彼の名言の中でも最も有名なものは、
「知らないことを知っていると思うことが最も危険である」
ソクラテス思想の解説の中で説明した通り、自分自身の無知を認めると共に知識や理解に対する謙虚さと、自己認識の重要性を強調しています。自分が無知であることを認めることで新しい知識を得て自己改善につながるということです。
ソクラテスは数知れないほどの名言を残しており、いくつかを下記にまとめてみました。
ソクラテスの名言
「汝自身を知れ」
「一人の人間がよい生き方をするには、まずよい人間であることが必要である。」
「生きることは哲学することである。」
「私は何も知らないと唯一確信しているのは、私が何も知らないということだけである。」
「美徳を知っているものは美徳を行い、知らないものは悪を行う。」
「善い生活とは、美徳的な人生を送ることである。」
「自分自身を知ることは、真理を知ることである。」
「人生において、あなたがよく生きるためには何が必要か、人々があなたに対して望むようなことではなく、あなたが自分自身に対しても望むべきことを知ることが重要である。」
ソクラテスは現世にどのような影響をもたらしているのか


ソクラテス自身では記録に残るような書物を残してないので弟子のプラトンによってソクラテスの偉業が後世に伝わるように残されました。ソクラテス自身が現世に直接影響を残しているのかは確信ではないですが、現代にソクラテスの思想が強く関係しているものがあります。
問答法の影響
ソクラテスは、問答法を用いることで人々が自己認識を深め、真理を発見することを目指しました。この問答法は、現代の対話やコミュニケーションにおいても応用され、自己認識や問題解決に役立てられています。
自己改善の影響
ソクラテスは、自己認識を通じて自己改善を追求することを提唱しました。現代でも、自己啓発や自己改善の書籍やコンテンツが多く存在し、その思想が反映されていると言えます。
言われてみれば、ソクラテスの思想が強く関係している、またはソクラテスの思想に影響されていると感じるものがあります。自己啓発本やコーチングの場でソクラテスの思想は強く引き継がれていると感じます。



自己啓発で言われていることがソクラテス思想に影響受けてるのあるよね
プラトンはソクラテスの弁明を通してソクラテスの哲学的思考やエピソードを残した
ソクラテスの弁明は、プラトンが『アポロギア』という作品で記録した内容が残っています。要所のみわかりやすく解説してみました。
- ソクラテスは、自分が知者であるとは思っておらず、むしろ自分は無知であることを自覚していると主張しました。
- 彼は、若者たちに課せられた義務である「自分自身を知ること」を追求し、それが周囲から不評を買ったと述べました。
- 彼はまた、評判が悪くなった原因は、名声や富を追求せず、優れた人間となることを追求したからだとも主張しました。
- ソクラテスは、自分が裁判で有罪判決を受けたことを受け入れましたが、その判決が不当であると考え、死刑判決を受け入れたと述べました。
- 最後に、彼は死後、神々が正しい審判を下してくれることを期待し、死の恐怖に打ち勝つために自分自身の信念に従って死ぬことを選択したと語りました。
このように、ソクラテスの弁明は、自分自身が追求した真理や道徳を守るために、自分自身の信念に従って生きることを選択し、その信念を貫いて死んだことが強く表現されています。ソクラテスが記録した書物などが残っていたら、さらに彼の思想を深く学ぶことができそうです。
まとめ


いかがでしたでしょうか?
ソクラテス思想についてわかりやすく解説してみましたが、現代を生きる私たちにとっても忘れがちだが大事な事であり、初心に帰らせてくれるような内容であったのかなと思います。
自己の無知を認め、謙虚さを持ち、問いかける姿勢を持つことで、より豊かな人生や社会を築くことができるという彼の哲学的アプローチは、自己啓発やコーチングの場、社会でも活用されています。何か悩み事があるときは現代ではなく過去の偉人が言ったことに頼ってみるのもいいのではないでしょうか。
この記事でわかったこと
- 「無知の知」は自分が何も知らないことを自覚することが重要であるということ
- 「問答法」はコーチングの場でも現代で生かされている
- 無知であることを自覚し、認めることで自身の考え方や信念を追求して自己改善を促す
- ソクラテスの弟子は同じ思想を受け継いでなく、全く異なる思想を持っていた
- ソクラテスの弁明では自分自身の信念を持って生きて、死んでいくことが表現されている
- 現代にもソクラテスの思想は自己啓発などで活かされている
寂しいのでコメントお願いします。